遺構

川から湿地へ

上層

中層 

下層

湿地の検出状況(東から)

湿地の断面・花粉分析サンプル

 森本町石田(いしだ)一帯を発掘調査すると、縄文時代〜弥生時代の川や湿地の跡がよく発見されます。左写真は、左京第323次地点で確認された湿地跡を東からみたものです。右写真は、湿地の断面を撮影したものです。
 湿地の堆積土は、大きく
3層に区分されています。上層は、縞(しま)土で長い年月をかけて少しずつ堆積したことがわかります。遺物はほとんど出土しませんでした。中層は未分解の植物遺体が多数出土しました。この層から弥生時代後期終末の土器が出土しました。おそらく、石田遺跡や鶏冠井遺跡の弥生人が残したものでしょう。下層は、還元化したグライ土です。弥生時代中期前葉の土器が出土しました。底面には大きな倒木も出土しました。各地層の土壌をサンプルして花粉分析を行いました。
 
弥生時代中期初め頃は、比較的安定した池沢〜沼沢のような湿地環境でした。ガマ属やヒシ属が繁茂していました。その後、同様な安定的環境の下、マコモ属などの植物が繁茂するようになります。そして後期末には付近で水田を行っていたと推定されます。乙訓地域の低地では、このような景観が一般的であったようです。
文献:國下多美樹「長岡京跡左京第323次(7ANEJS-12地区)〜左京二条二坊八町(南一条二坊六町)、東二坊坊間小路、石田遺跡〜発掘調査概報」『向日市埋蔵文化財調査報告書』第39集(財)向日市埋蔵文化財センター・向日市教育委員会 1995年